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研究書(文学系) 詳細
富める者から貧しきものへの上昇
有島武郎の思想と文学
書名かな | とめるものからまずしきものへのじょうしょう―ありしまたけおのしそうとぶんがく― |
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著者(編者)名 | 馮 海鷹 著 |
著者(編者)名かな | ひょう かいよう |
ISBNコード | 978-4-8386-0291-9 |
本体価格 | 7,500円 |
税込価格 | 8,250円 |
判型 | A5判上製カバー装 |
頁数 | 288頁 |
刊行日 | 2015年10月30日 |
在庫 | 残部僅少 |
有島の人物像をその内的要素から読み解く
西洋と日本という二つの価値観をいずれもほぼネイティブ・レベルで受容した有島の場合、そこから生まれたのは、時代を導く新たな思想といったものではなく、とてつもない葛藤、価値観の激しいぶつかりあいであった。彼の行動原理の不思議さは、しばしば価値観相互の相克に由来すると考えられ、こうした受容の外的原因からだと解釈された。しかし、私には寧ろ彼自身の持つ内的要素のほうが彼の性格と価値観を左右しているように思う。このことが彼の人物像を統一的に彫り上げていくことを困難にしているように思われる。
【目次】
まえがき
第一章 生と存在を問う
第一節 埴谷雄高『死霊』
─会話の中のジェンダーとその変遷─
はじめに
一、男性主人公の会話の難解さ
二、前半部女性主人公の会話の特徴
三、後半部女性会話の変化
おわりに
第二節 恋ならぬ〈片恋〉─芥川龍之介 『片恋』を読む─
一、志村とお徳の〈片恋〉
二、西洋への〈片恋〉
三、偶像への〈片恋〉偶像化への〈片恋〉
第三節 芥川龍之介『点鬼簿』─ある〈僕〉の物語─
一、私小説ならざる『点鬼簿』
二、一人称語りの「僕」
三、芥川の構図
四、「僕」の人物像
五、結び
第四節 志賀直哉『赤西蠣太』における視点の移動
はじめに
一、視点の移動
二、赤西蠣太の恋
おわりに
第五節 太宰治『めくら草紙』─その解読への試み─
一、見ることへの意識
二、冒頭部の映像効果
三、末尾の映像効果
四、「めくらそうし」と「まくらのそうし」
第二章 有島武郎の求道
第一節 『老船長の幻覚』から『或る女』へ
一、『老船長の幻覚』におけるコミュニケーション形式
二、「医師の娘」の非幻覚性
三、『老船長の幻覚』と『或る女』の〈海〉
(一)『老船長の幻覚』における〈海〉
(二)イプセン『海の夫人』における〈海〉
(三)『或る女のグリンプス』における〈海〉
四、『或る女』の改稿問題
第二節 『クラヽの出家』─涙の意味─
はじめに
一、『クラヽの出家』の構造
二、夢の図式
三、回想(地の文)から見る現実の粗筋
四、涙というシニフィアン
おわりに
第三節 聖書のことば
─『かん\/虫』と『三部曲』の距離─
一、『かん\/虫』の発表稿と草稿の対照
二、『かん\/虫』発表稿の主題と聖書の関係
三、『かん\/虫』における有島の聖書借用問題
四、『かん\/虫』から『三部曲』
五、『三部曲』
(一)「大洪水の前」
(二)「サムソンとデリラ」
(三)「聖餐」
第四節 『宣言』─書簡体小説を読む─
一、『宣言』の書簡体の特殊性
二、AとBの関係をめぐって
三、Bの覚醒
四、結び
第五節 『カインの末裔』─もう一つのコンテクスト─
一、仁右衛門のコンプレックス
二、聖書におけるカイン
三、『カインの末裔』の中の語り手
第六節 有島の人間論
─『惜みなく愛は奪ふ』と『生活と文学』─
一、『惜みなく愛は奪ふ』の概観─神と人間の狭間で─
二、『生活と文学』─「愛」の芸術論─
三、人生論としての『惜みなく愛は奪ふ』
第三章 付論 中国と日本─受容・活用・読み解き─
第一節 『枕草子』と白居易の詩文
一、類聚的、随想的章段における受容
二、やりとりの中の受容
三、心情的受容
第二節 『枕草子』に対する『源氏物語』のライバル意識
─『白氏文集』の受容を中心に─
一、引用の数値的比較
二、「長恨歌」と「琵琶引」
三、紫式部のライバル意識
第三節 魯迅『故郷』における回想の位相
はじめに
一、記憶と現実の狭間で
二、時間における三つの層
三、翻訳と読み解き
おわりに
あとがき