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国冬本源氏物語論

書名かな くにふゆほんげんじものがたりろん
著者(編者)名 越野優子 著
著者(編者)名かな こしのゆうこ
ISBNコード 978-4-8386-0296-4
本体価格 9,500円
税込価格 10,450円
判型 A5判上製カバー装
頁数 272頁
刊行日 2016年9月15日
在庫 残部僅少

今後の研究の指針となる書

 本文研究というのは、作品研究などとは異なり、きわめて緻密な作業と読解力が求められる分野である。
 別本はいずれもそうなのだが、全巻がそろっているわけでもなく、写本の扱いも厄介で、巻ごとに位置づけも慎重な扱いが必要となる。
 第1章では、そのような背景も考慮し、諸本研究における国冬本の意義を説き、自らの研究の立場を明確にする。
 その視点のもとに、第2章以下鈴虫巻や柏木巻・藤裏葉巻などに取り組み、独自異文の意義を解釈し、読みの世界を深めていく。
 本文の異同に拘泥するのではなく、呼称の問題からさらに作品論へと向かうなど、自ら新しい課題を押し広げようとする姿勢は、今後の研究の指針ともなるであろう。

<序文/伊井春樹 より抜粋>

目次

序文   大阪大学名誉教授・阪急文化財団理事・館長 伊井春樹
凡例

序章

1はじめに

2国内の個人史から

 

第1章 国冬本源氏物語の研究の位置づけ

1 本文研究史――その幕開けから『源氏物語別本集成』

2 『源氏物語別本集成』の意義と電子メディア時代

3 原点(混沌)への回帰とこれから

4 国冬本概論――書誌的

5 〈独自本文〉という言葉の使用

6 国冬本に関する参考文献

 

第二章 作品論的視座から――国冬本少女巻を中心に

 1 はじめに

 2 大学の博士の描写

 3 大島本とは異なる夕霧像について

 4 邸宅造営にみる独自性

 5 紫の上の呼称について

 6 終わりに

 

第三章 人物論的視座から
     ――国冬本鈴虫巻を中心とした女三宮について

1 はじめに

2 先学論考より

3 国冬本鈴虫巻の独自本文

4 国冬本鈴虫巻の女三宮

5 国冬本の他巻における女三宮

 6 国冬本柏木巻の女三宮

 7 終わりに

第四章 和歌論的視座から――国冬本藤裏葉巻をめぐって

 1 はじめに
    ――伝飛鳥井頼孝卿筆国冬本の和歌の諸相をめぐって

 2 国冬本藤裏葉巻の個々の和歌の様相

 3 終わりに

 

第五章 象徴論的視座から――本文研究と象徴との接点

 1 はじめに
    
――〈「ひかるきみ」命名伝承の二重化〉の、唯一起きぬ伝本として

 2 通常の「命名伝承の二重化」をもつ伝本の考察から

 3 源氏物語における「世の人」の役割

 4 史料から見た高麗人命名伝承の位置づけ
    ――「古系図」より

 5 「ひかるきみ」という呼称の意味
    ――本文研究の中で〈象徴〉を問うこと

 6 巻末欠落の理由について

 7 〈高麗人の命名伝承〉に続く欠如
    ――「鴻臚館」の言葉の欠如

 8 終わりに
    
――国冬本桐壺巻での断絶と孤立/「ひかるきみ」の意味するもの

 

第六章 享受論的視座から
     ――国冬本と物語内部、そして外部へ

 1 はじめに

 2 「柏木」の呼称の出現以前の様相

 3 源氏物語古系図への「柏木」出現

 4 異例の呼称の理由
    ――「柏木」が官職に付されること

 5 国冬本柏木巻巻末独自本文の意味
    ――物語内部の世人から外部の享受者へ

 6 物語外部
    
――『花鳥風月』から『須磨源治』をつなぐ呼称の問題

 7 『須磨源治』について

 8 源氏物語原文における源氏の呼称

 9 翻訳の世界における源氏の呼称

 10 光君と光源氏の呼称の相違

 11 『須磨源治』における源氏の呼称

 12 終わりに

 

第七章 翻訳論的視座から

 1 はじめに――韓国の翻訳状況

 2 国冬本読解及び韓国語訳

 3 源氏絵享受とは

 4 個人蔵扇面図八枚から――作品と場面の比定

 5 『花鳥風月』『室町殿日記』の比定のありかた

 6 漫画『あさきゆめみし』の問題について

 7 韓国語版『あさきゆめみし』の呼称の論理

 8 韓国語版『あさきゆめみし』の上下関係の論理

 9 終わりに

 

第八章 注釈論的視座から
     
――桐壺・少女・野分・柏木・鈴虫の物語世界を中心に――

 1 はじめに

 2 試作 『国冬本源氏物語』注釈

   2-1 試作版『国冬本源氏物語』
   2-1-1
 国冬本桐壺巻(伝国冬筆鎌倉末期一筆本)
        ――桐壺更衣の描写

   2-1-2 国冬本桐壺巻
        ――「光る君」の呼称の誕生

   2-1-3 国冬本桐壺巻巻末
        ――強い思慕のとじ目

   2-1-4 国冬本少女巻(伝国冬筆鎌倉末期一筆本)
        ――二条院の像築

   2-1-5 国冬本野分巻(伝柳原殿淳光卿筆室町末期本)
        ――六条院の童女の描写

   2-1-6 国冬本鈴虫巻(伝国冬筆鎌倉末期一筆本)
        ――過去を反芻し成長する女三宮像

   2-1-7 国冬本柏木巻(伝国冬筆鎌倉末期一筆本)
        ――「煙比べ」の歌に続く箇所について

 3 終わりに

 

第九章 統計論的視座から
     
――シミュレーションを通してみた国冬本の特異性――

 1 はじめに

 2 伝本間の相違の扱われ方と評価――桐壺・柏木巻を例として

 3 統計的手法による【凡例】――新美理論をたたき台に

 4 問題点――その1 国冬本桐壺巻末一文を如何に扱うか

 5 問題点――その2 物語のあらすじに関わる場合

 6 終わりに

 

終章 今後の課題とあとがき
    ――国冬本を端緒に広がる未来へ――

 
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