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研究書(文学系) 詳細
表現としての源氏物語
書名かな | ひょうげんとしてのげんじものがたり |
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著者(編者)名 | 廣田 收 著 |
著者(編者)名かな | ひろた おさむ |
ISBNコード | 978-4-8386-0755-6 |
本体価格 | 14,000円 |
税込価格 | 15,400円 |
判型 | A5判上製カバー装 |
頁数 | 602頁 |
刊行日 | 2021年6月23日 |
在庫 | 有り |
平安京の物語の表現とは何か
つまり、平安京の物語とは、『源氏物語』をひとつの極とする一方、(互いに影響関係の希薄な)『宇治大納言物語』をもうひとつの極とするであろう。すなわち、『枕草子』が興味を示し、記録している物語の中で、(『宇津保物語』や『住吉物語』などを除いて)群小物語がひとつの核をなすまでには至らないとすれば、平安京の物語とは、そのような二極を含む、緩やかな楕円的な世界を意味するであろう。そのように考えることで、本書において、ようやく説話としての『宇治拾遺物語』『宇治大納言物語』をも対象とすることができる。つまり、本書は「表現としての源氏物語」と題しているが、内容からいうと、『竹取物語』『伊勢物語』『源氏物語』『宇治拾遺物語』を、かろうじて「平安京の物語」として捉えることが見通せるのではないかという目論見を隠している。
平安京の物語・物語の平安京─まえがきにかえて─
一 中古文学は孤立しているか
二 『源氏物語』分析ともうひとつの企て
三 口承文芸との関係の中で文献文芸が生成すること
四 平安京の物語の表現とは何か
五 『源氏物語』と『宇治拾遺物語』と
六 『源氏物語』の方法と主題
まとめにかえて
序章 古代物語研究の戦後と私の現在
はじめに
一 伝承社会の『源氏物語』
二 口承文芸を対照軸とすること
三 民間説話と『源氏物語』
四 口承と書承と─誰に何を学ぶか─
五 出典と影響、伝播と受容という発想
六 比較研究における神話とは何か
七 構築されるテキストの重層性
八 古代物語としての『源氏物語』
まとめにかえて
第一章 『竹取物語』表現と構成
第一節 『竹取物語』の表現「いつつもちて」考
はじめに
一 見セ消チ「いつつ持ちて」に関する疑問
二 複数の少女たち
三 複数の少女たちから選び取る手続き
四 昔話「桃太郎」における誓約
五 日本の祭祀の枠組み
六 神話の秘義性と伝説の遊戯性
まとめにかえて
第二節 昔話の語りと『竹取物語』の文体と構成
はじめに
一 昔話を考察する手続き
二 桜井小菊による昔話の語り口
三 語り口から想定される昔話の構成
四 昔話「鳥呑爺」の基本的構成
五 昔話の基層と古層
まとめにかえて
─「鳥呑爺」と『竹取物語』との関係に及ぶ─
─「鳥呑爺」と『竹取物語』との関係に及ぶ─
第三節 昔話と古典文芸『竹取物語』
─昔話「竹姫」との比較をめぐって─
─昔話「竹姫」との比較をめぐって─
はじめに
一 柳田国男の所説と論点
二 昔話と『竹取物語』 比較研究の視点
三 『竹取物語』との比較からみる
昔話「竹姫」の構成的分析
昔話「竹姫」の構成的分析
四 昔話「竹姫」と『竹取物語』との異同
まとめにかえて
第四節 『竹取物語』の文体と構成
─冒頭の表現を伝承の視点から読む─
─冒頭の表現を伝承の視点から読む─
はじめに
一 物語の文体に関する研究史
─阪倉篤義氏の仮説をめぐって─
─阪倉篤義氏の仮説をめぐって─
二 『竹取物語』における繰り返し表現
三 『竹取物語』の叙述の構成と文体
四 事項群における小さな主題と「けり」の配置
まとめにかえて─『竹取物語』の枠組みをめぐって─
第二章 『伊勢物語』表現と構成
第一節 『伊勢物語』の方法
─初段と第二段の地名から見る─
─初段と第二段の地名から見る─
はじめに
一 「むかし」としての古京
二 序詞の中の地名
三 互換される地名
四 異伝としての『在中将集』
五 歌の意図と物語の構成
六 地名と『伊勢物語』の方法
第二節 『伊勢物語』と長岡京
はじめに
一 昔男のさすらい
二 旧都「長岡」の記憶
三 『今昔物語集』の「長岡」
まとめにかえて
第三節 『伊勢物語』翁章段
─『源氏物語』の「翁」に向けて─
─『源氏物語』の「翁」に向けて─
はじめに
一 『伊勢物語』翁章段の分析
二 『竹取物語』の「翁」という語
三 『源氏物語』における「翁」
まとめにかえて
第三章 『源氏物語』禁忌と表現
第一節 『源氏物語』における詠歌の場と表現
─「言忌み」をめぐって─
─「言忌み」をめぐって─
はじめに
一 『源氏物語』における「言忌み」
二 『紫式部集』『紫式部日記』の「言忌み」
三 他のテキストにおける「言忌み」
まとめにかえて
第二節 『源氏物語』女三宮の恋
─皇女の生き方をめぐって─
─皇女の生き方をめぐって─
はじめに
一 『源氏物語』における人物設定と話型
─基本的対偶の類型─
─基本的対偶の類型─
二 皇女の運命
三 女三宮降嫁と三日餅の儀式
四 その後の女三宮
五 光源氏を拒否し通した朝顔姫宮
まとめにかえて
第三節 『源氏物語』朝顔考
─人物論的な理解から物語の方法的な理解へ─
─人物論的な理解から物語の方法的な理解へ─
はじめに
一 帚木巻の事例
二 葵巻の朝顔姫君
三 賢木巻の朝顔姫君
四 朝顔巻の朝顔姫君
まとめにかえて
第四節 『源氏物語』の文体的特質
─表現の繰り返しを手がかりに─
─表現の繰り返しを手がかりに─
はじめに
一 待井新一氏の説についての検討
二 池田節子氏の説についての検討
三 岡部政裕・山本利達両氏の説についての検討
四 桐壺巻の場面の分析
まとめにかえて
第五節 『源氏物語』における和歌の儀礼性
─立歌と送り歌とをめぐって─
─立歌と送り歌とをめぐって─
はじめに
一 須磨巻における贈答歌の解釈
二 須磨巻における花散里との離別場面の解釈
三 夕顔巻における中将の君と光源氏の唱和
四 総角巻における薫と大君との唱和
まとめにかえて
第六節 『源氏物語』繰り返される構図
─物語に託された主題─
─物語に託された主題─
はじめに
一 桐壺更衣の答歌
二 御法巻における紫上と光源氏との唱和
三 宇治大君の逝去と遺される薫
四 自らの存在について問う人物の系譜
まとめにかえて
第七節 久富木原玲著
『源氏物語と和歌の論 異端へのまなざし』書評
『源氏物語と和歌の論 異端へのまなざし』書評
はじめに
一「序にかえて─『源氏物語』という異文化─」
二 第Ⅱ部 第4章「夢歌の位相─小野小町・以前・以後─」
三 第Ⅲ部 第13章「歌人としての紫式部
─逸脱する源氏物語作中歌─」
─逸脱する源氏物語作中歌─」
四 第Ⅵ部 第29章「平城天皇というトポス
─歴史の記憶と源氏物語の創造─」
─歴史の記憶と源氏物語の創造─」
五 第Ⅶ部 第32章「王朝和歌─正統と異端の十歌人─」
まとめにかえて ひとこと
第四章 『宇治拾遺物語』説話集の編纂と説話の表現
第一節 説話研究の目的と方法
はじめに
一 このテーマを設定する理由
二 物語と伝承の概念
三 在地の伝承と文献物語との関係
四 昔話と説話の繰り返し─表現と構成と─
五 比較という方法の問題点
六 口承文芸を国文学研究においてどう捉えるか
七 これからの課題
第二節 平安京の物語としての『宇治拾遺物語』
はじめに
一 説話か、物語か、昔話か
二 説話分析の方法
三 構造か、表現か
四 仏法か、世俗か
五 『宇治拾遺物語』を貫く思想
六 『宇治拾遺物語』が「平安京の物語」であること
第三節 『宇治拾遺物語』猿楽考
はじめに 考察の前提と論点
一 『宇治拾遺物語』第七四話における猿楽
二 第四七話における猿楽の構成要素
三 まとめにかえて
第七四話及び第三話はどう読めるのか
第七四話及び第三話はどう読めるのか
第四節 『宇治拾遺物語』藤原朝成 水飯考
はじめに
一 印象批評の範囲で考えられること
二 『宇治拾遺物語』と『今昔物語集』との比較
三 『宇治拾遺物語』と『古今著聞集』との比較
四 本説話と朝成の怨霊説話とはどう関係するか
まとめにかえて
結章 『源氏物語』表現の重層性をどう見るか
─影響論・受容論の帰結─
─影響論・受容論の帰結─
一 見えない枠組みとしての神話
二 『源氏物語』というテキストの中間層
三 『源氏物語』の重層性はどのようにみえるか
初出一覧
あとがき
索引(人名・書名・主要語彙)