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研究書(文学系) 詳細

9784838607648

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いはでしのぶ物語の研究

―王朝物語文学の終焉―
書名かな いはでしのぶものがたりのけんきゅう―おうちょうものがたりぶんがくのしゅうえん―
著者(編者)名 毛利 香奈子 著
著者(編者)名かな もうりかなこ
ISBNコード 978-4-8386-0764-8
本体価格 10,000円
税込価格 11,000円
判型 A5判上製カバー装
頁数 320頁
刊行日 2022年1月30日
在庫 有り

『いはでしのぶ』という物語のなんたるかを問う

 後嵯峨院時代に作られたとされるこの物語をはじめ、中世王朝物語は、『源氏物語』などの「模倣」として軽く扱われてしまうことが多い。この物語を精査し、「研究史」を問い、第一部では「見ること、似ること」のその双方の関係を捉えなおし、第二部では「手紙」という重要なアイテムから、物語の前半と後半での担う役割に注目し、第三部では「琴」と「笛」といった「楽器」や音楽からその背後にある皇統に触れ、第四部では物語の中心人物である「一品宮」について論じる。真正面から『いはでしのぶ物語』に挑んだ一書。

【目次】

  凡例
 序章
  一 中世王朝物語『いはでしのぶ』について
  二 『いはでしのぶ』研究史概要
  三 『いはでしのぶ』各巻の概要
  四 本書の概要

第一部 見ること、似ること
 第一章 一品宮―物語世界の座標
   一 「碁」と「氷」の場面
   二 「碁」の空間―碁盤を囲む人々の関係性
   三 「見証役」という資格―見比べの空間
   四 「氷」の空間―同化する「氷」と女君
   五 「美の基準」としての一品宮
       ―「碁」と「氷」を超えて
   六 絶対的な「相似の基準」へ

 第二章 二位中将―再現する者
   一 物語における「似ること」
   二 二位中将の「似ること」―「たぐふ」もの
   三 「見ること」と経験の共有―共感から同化へ
   四 なぞり、写し取ること―深まる同化
   五 劣化を伴う再現―生の交換としての「似ること」
   六 作られる「似ること」

 第三章 右大将―「似ること」からの脱出
   一 波及する「似ること」
   二 右大将の「似ること」
   三 矛盾を孕む相似―「似ること」を忌避する
   四 似られない右大将―不完全な後継者
   五 孤独からの救済―「似ること」に依らない縁
   六 「一品宮中心世界」の輪郭

第二部 手紙
 第一章 二位中将―手紙と「仲だち」
   一 物語における手紙
   二 「まこと」と「いつはり」―内大臣と一品宮の手紙
   三 手紙と噂―意思疎通の機能不全
   四 共感する存在―二位中将
   五 「仲だち」としての二位中将

 第二章 現実を作る噂―沈められた欲望
   一 引き金としての「噂」
   二 一品宮にまつわる噂
   三 実事なき噂―『狭衣物語』巻三との比較から
   四 つくられる現実―降嫁と離別
   五 沈められた過去と欲望
   六 不確かな声、その影響力

 第三章 右大将―筋書きの選択と手習
   一 三つの手習/手紙
   二 手習の発見―曖昧な物思い
   三 創出される贈答
   四 生き方の選択―左大将への反発、宰相中将への共感
   五 遁世という救済―右大将物語の「まこと」の行方
   六 ふたつの物語世界

第三部 音楽
 第一章 琴の琴―一品宮との「合はせ」
   一 物語における琴の琴
   二 『いはでしのぶ』の音楽
   三 一品宮の矜持と琴―端午の節句の御遊
   四 内大臣の一の才―嵯峨帝の御遊
   五 一品宮との「合はせ」―一条院の御遊
   六 融合するふたつの琴―白河院六十賀の御遊

 第二章 右大将の笛―異分子の音
   一 物語における笛
   二 「音の限り」―奏法の相伝
   三 驚かせる音―異分子の音色
   四 持ち主の行方―笛の相伝
   五 異分子の鎮魂―笛の奏法の相伝

第四部 一品宮
 第一章 一品宮の降嫁―皇女の傷と回復
   一 二人の一品宮
   二 排斥された男君の反乱
   三 聖女一品宮の傷―物語世界からの退場と復活
   四 一品宮の居場所―受容するという強さ
   五 狭衣大将から一品宮へ

 第二章 連関する密通―もたらされる赦し
   一 物語における密通
   二 男君の病と死―柏木・内大臣
   三 皇女との密通―柏木の「咎」の行方
   四 賛美される子供と赦し―二位中将と一品宮腹若君
   五 闇に葬られる罪―女一の宮と女四の宮腹若君
   六 皇女の復活―「つゆの乱れ」の平定
   七 回復を志向する物語

補遺 『いはでしのぶ』前後
 第一章 「まもる」が見出す縁と絆
       ―『源氏物語』を起点として
   一 仮名文字テキストにおける「まもる」
   二 『源氏物語』における「まもる」
   三 「まもる」が見出すつながり
   四 『源氏物語』以降の「まもる」
   五 長編物語の一手法として

 第二章 雛屋の中の報復―『恋路ゆかしき大将』
   一 恋路の形成と親世代
   二 恋の「しるべ」となる報復―恋路大将
   三 「雛屋」の中のふたり―恋路大将と女二の宮
   四 恋路大将の影響力
   五 群集する「虫」―「同じさま」になる男君たち
   六 報復の道具として―玉光るの望み
   七 もうひとつの『いはでしのぶ』

終章

  初出一覧
  あとがき
  索引(研究者・作中人物・事項)


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