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研究書(文学系) 詳細

9784838607648

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中世歴史物語の基幹組成

─『増鏡』『梅松論』の文学史的研究─
書名かな ちゅうせいれきしものがたりのきかんそせい―『ますかがみ』『ばいしょうろん』のぶんがくしてきけんきゅう―
著者(編者)名 福田景道 著
著者(編者)名かな ふくだあきみち
ISBNコード 978-4-8386-0770-9
本体価格 15,000円
税込価格 16,500円
判型 A5判上製カバー装
頁数 454頁
刊行日 2022年11月1日
在庫 有り
『増鏡』や『梅松論』を支える「基幹組成」の剔抉を通じて、歴史物語史の岐路と針路を見定める。

 優雅な擬古文と宮廷文化への憧憬から、王朝文学史の掉尾を飾る佳作と見られてきた歴史物語『増鏡』と、『大鏡』の対話様式に倣いながら、武家側から南北朝の動乱を描いた史論ないし軍記とみなされてきた『梅松論』―。本書は、平安から江戸に至る歴史物語史を俯瞰する著者ならではの視座から、この二作品を支える「基幹組成」の剔抉を通じて、歴史物語史の岐路と針路を見定める。停滞久しい中世歴史物語研究の再起動を促す、待望の一書。

はじめに

序編 『増鏡』と『梅松論』─中世歴史物語史の岐路─
 第一章 歴史物語史の中の『増鏡』と『梅松論』
      ─分岐する中世歴史物語─
   はじめに─歴史物語の性格─
   一 歴史物語史における『増鏡』と『梅松論』
   二 『増鏡』と『梅松論』の枠物語構想

 第二章 『増鏡』と『梅松論』の基幹組成
      ─「横さま」と「横シマ」の皇位継承史─
   一 『増鏡』に見られる「横さま」の皇位継承
   二 「横さま」ではない後嵯峨院
   三 『梅松論』に現れる「橫シマ」の皇位継承
   結 文芸的歴史叙述の統一性

第一編 『増鏡』の基幹組成と世界構図

 第一章 歴史物語としての『増鏡』
      ─皇位継承史構想をめぐって─
   一 「皇位継承」に依拠する宮廷貴族
   二 「皇位継承」に関与する武家政権
   三 皇位継承史構想
   四 基幹を貫流する皇位継承史と明暗反転
 第二章 『増鏡』の基幹組成
      ─二家系対照と明暗循環の構図─
   一 北条義時の兄、宗時の存在
   二 温順な兄と聡敏な弟の明暗
   三 二家系対照の構図
   四 二家系共存の基幹構想
 第三章 『増鏡』の基軸構想
      ─同趣事象の反復と明暗循環─
   一 仲恭帝の悲運─強調される明暗反転─
   二 未来に繋がる先例と繋がらない先例
   三 同趣事象の反復
   四 同趣事象の明暗対比
   五 明暗を反転させる後嵯峨院
 第四章 『増鏡』と両統問題─競合と並存─
   一 二皇統並立時代の歴史叙述
   二 大覚寺統支持説と持明院統支持説
   三 中立的立場と両立的立場
   四 競合する二皇統
   結 二皇統共存の構図
 第五章 『増鏡』の「先例」記述
   一 編年史における「先例」の機能
   二 「先例」を超える現実
   三 明暗落差を強調する「先例」
   四 操作される「先例」
   五 『増鏡』の構想と「先例」
 第六章 『増鏡』の「予言」記事
   一 「先例」による「予言」
   二 予祝歌と明暗反転
   三 世評による予言
   四 皇位継承と神意
   五 皇統並存の歴史叙述
 第七章 『増鏡』にみられる宮廷貴族諸流の盛衰
      ─外戚から近臣へ─
   一 宮廷貴族の動向
   二 九条道家の栄華
   三 西園寺家の栄光
   四 皇統に依存する宮廷貴族
   五 「外戚」から「近臣」へ
 第八章 『増鏡』の非政治的記事について
      ─皇位継承史的性格の考察─
   はじめに
   一 女性と情事
   二 行事・儀式の盛大さ
   三 諸本の問題について
   四 皇位継承史的構想
 第九章 『増鏡』と隠岐
   一 『増鏡』における「地方」と「中央」
   二 後鳥羽院と後醍醐帝の近似性
   三 異郷(異界)としての隠岐
   四 再生の場としての隠岐

第二編 『梅松論』の基幹組成と世界構想

 第一章 歴史物語としての『梅松論』
      ─皇位継承史構想をめぐって─
   一 『梅松論』の中の歴史物語的要素
   二 「将軍」の意味
   三 伏流する「世継」
   四 「官軍」と「凶徒」
   五 歴史物語史の中の『梅松論』
 第二章 『梅松論』の基幹構想─「将軍」と「正統」─
   一 交替する「正統」
   二 統治の正否と皇統の正邪
   三 北条氏評価の二元性
   四 「先代」の意味
   五 「将軍」尊氏と「天」
 第三章 『梅松論』の皇位継承史構想
      ─後堀河院・後嵯峨院・光厳院の正統性─
   はじめに
   一 間欠的皇位継承史
   二 後堀河院の皇位継承
   三 後嵯峨院の遺勅と皇位継承
   四 所詮持明院殿ハ天子ノ正統
 第四章 天理本『梅松論』の歴史構想
      ─正確性と精密性の追求─
   はじめに─天理本『梅松論』について─
   一 史実の精確化と先行作品転用
   二 後堀河院の系譜と天理本
   三 皇位継承史構想と史実性
   結 文芸的歴史叙述としての天理本『梅松論』
 第五章 『梅松論』枠物語の変容
      ─登場人物の世代と「先代様」─
   はじめに─『梅松論』の枠物語設定と諸本─
   一 京大本の枠物語
   二 天理本の枠物語
   三 流布本の枠物語
   四 『梅松論』の時代区分法
   五 「先代様」の変質と世代間格差
   結 『梅松論』歴史語りの変容
 第六章 『太平記』の皇位継承史構想
      ─『梅松論』『増鏡』と対比して─
   はじめに
   一 歴史物語と軍記文学
   二 軍記文学『太平記』と「世継」
   三 大塔宮護良親王と皇位
   四 嫡流光厳院の正統性
   結 『太平記』と歴史物語

第三編 中世歴史物語の史的展開

 第一章 歴史物語の系譜と中世歴史物語
   一 中世における歴史物語作品群
   二 歴史物語史の根幹
 第二章 歴史物語の系譜と『増鏡』
      ─作品世界の統一と文学史再編成─
   一 歴史物語と日本通史
   二 歴史叙述の「歴史領域」と「起点」
   三 『六代勝事記』と『五代帝王物語』の歴史領域
   四 『弥世継』の位置づけ
   五 『増鏡』による歴史物語史再編成
 第三章 『増鏡』型歴史物語の系流
      ─もう一つの歴史物語史─
   一 歴史物語観の確立過程
   二 もう一つの歴史物語史
   三 『増鏡』型歴史物語の系列
 第四章 源家の歴史物語─第四の歴史物語─
   一 『梅松論』の枠物語構想の変容
   二 『源威集』と『神明鏡』
   三 源家歴史物語の萌芽
 第五章 中世における歴史叙述と通史教育
   一 歴史物語と「教育」
   二 枠物語の教育的性格
   三 通史と皇位継承史
   四 通史的歴史叙述と教育
 付 章 『増鏡』・『梅松論』の本文と成立について
   一 『増鏡』の本文
   二 『梅松論』の本文
   三 成立時期と作者について

  本書の要約
  初出一覧

おわりに
索引(古典籍書名索引・歴史人物名索引・研究者名索引)


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